開発者インタビュー 日本の酒文化に学んだ新製品「檸檬堂」のすべて

5月28日、コカ・コーラシステム(*)初のレモンサワー専門ブランド「檸檬堂(れもんどう)」が、九州地区限定でコンビニエンスストア、スーパーマーケット、量販店にて先行発売されます。
日本のコカ・コーラ社は、世界のコカ・コーラ社の中でも年間で発売する新製品の数がもっとも多く、イノベーションを牽引する役割を果たしています。これまでの数々のチャレンジ、そして新しいアイデアを実現してきた同社ですが、右肩上がりで成長を続けている缶チューハイ市場の動向を踏まえ、レモンサワー専門ブランドの導入を決断しました。
今回は、「檸檬堂」のブランドマネージャーであるパトリック・サブストローム、製品開発を担当した横山明幸、パッケージのグラフィックデザインを担当した原田朋子に、この画期的な新製品ができあがるまでの裏側を聞きました。

*コカ・コーラシステム……原液の供給と製品の企画開発や広告などのマーケティング活動を行う日本コカ・コーラ株式会社と、製品の製造・販売を行うボトラー社で構成される。

開発は「居酒屋めぐり」からスタート

── 「檸檬堂」は全世界のコカ・コーラ社の中でも例を見ない、アルコール飲料ブランドです。アルコール飲料といってもさまざまな種類がありますが、レモンサワーを選んだ理由はなんだったのでしょうか。

サブストロームアルコール飲料を開発するにあたって、まずいくつかの居酒屋に行ってみました。そうすると東京の恵比寿や新宿をはじめ、こだわりのレモンサワーを出す店が繁盛していたんです。しかも、どれも個性的でおいしい。いままでのレモンサワーのイメージが覆りました。さらにここ数年は、さまざまな店のレモンサワーが一堂に会するレモンサワーのイベントも開催されています。缶チューハイ市場でも、レモンフレーバーは最もよく飲まれていて、市場全体の成長をけん引していることから、ここにレモンサワーで参入しようと決めました。

写真左から、原田朋子、パトリック・サブストローム、横山明幸

──実際にお酒が飲まれている現場から、ヒントを得たんですね。

サブストロームそうですね。最初は一人でいろいろな店に行っていたのですが、プロジェクトチームが立ち上がってからは、チームメンバーで居酒屋巡りもしました。

原田そうでしたね。私も行きました。

横山研究開発メンバーも、自主的にお店をまわりました。レモンサワーのイベントにも行きましたよ。いろいろなレモンサワーを飲むことで、「こういうレモンサワーをつくりたい」という味や飲み心地などの目標を見つけようとしていたんです。また、人気のお店は料理や雰囲気など総合的にこだわっていることが分かり、学ぶところが多かったですね。

レモンを「丸ごと」すりおろして使用

──今回の「檸檬堂」、製法にはどんなこだわりがあるのでしょうか。

横山まず、コカ・コーラ社がお酒を出す意味はどこにあるのか、と自分なりに考えました。その結果、コカ・コーラ社がこれまで培ってきた果汁飲料の技術を、アルコールとうまく組み合わせたらいいものが生まれるのではないか、という考えに至ったのです。そこから、今回使用している「前割りレモン」にたどり着きました。前割りレモンとは、レモンを皮ごとすりおろし、あらかじめアルコールで漬けてなじませるつくり方で、ある居酒屋で教えてもらいました。これを再現したい、と思いましたね。

──前割りレモンを使うと、あとからレモン果汁を絞って入れるつくり方とは、味が変わってくるのでしょうか。

横山より奥行きのある味になるんですよね。レモンとお酒のうまみをより感じることができます。この製法を参考にして製造したのが「檸檬堂」です。

缶チューハイ好きの多様なニーズに応えるラインナップ

──今回「檸檬堂」では、「定番レモン」「塩レモン」「はちみつレモン」の3種類を発売します。それぞれ、どんな味わいなのでしょうか。

横山「定番レモン」は誰でも楽しめてどんな食事にも合う、定番のおいしさを目指しました。アルコール度数5%でレモン果汁はしっかり10%です。「塩レモン」はアルコール度数が7%、塩で味を引き締めているので、よりお酒のおいしさを楽しんでもらえます。「はちみつレモン」はやさしい味わい。はちみつでほんのり甘く仕上げてあり、ゆったりと食後に飲むのもおすすめです。アルコール度数は3%と低めにしてあります。

──どうして、それぞれアルコール度数を変えてあるんですか?

サブストロームスーパーマーケットやコンビニエンスストアのアルコール飲料の棚を見ていて、気づいたことがあるんです。ビールはどの商品もアルコールの度数がある程度揃っているのに対し、缶チューハイはブランドによって3%から9%まで幅がある。缶チューハイには、強いお酒を楽しみたい人から、お酒はそんなに強くないけど気分は楽しみたいという人まで、幅広いニーズが存在しているのでしょう。だったら、レモンサワー専門ブランドとしては、そのニーズに応えていかないといけないんじゃないかと考えたんです。

──3つの中で、皆さんはどれが好きですか?

横山僕は「塩レモン」ですね。

原田私もです。お酒が好きな人は、「塩レモン」派が多いと思います。

サブストローム私は、しいて言えば「定番レモン」ですね。でも、「塩レモン」も「はちみつレモン」もそれぞれ違った味わいが楽しめるので、甲乙つけがたいです。とにかく、どれもびっくりするくらいおいしいんですよ。

製品名やデザインは「日本の酒文化」をイメージ

──「檸檬堂」という和風のネーミングやコンセプトは、どこから生まれたのでしょうか。

サブストロームこれもやはり、実際の酒場からヒントを得ています。レモンサワーにこだわり、かつ人気のあるお店は、日本の酒文化の伝統を受け継ぎ、現代的に昇華させている店が多かったんです。また、今回はアルコール飲料市場に新規参入するわけですから、これ1回で終わってしまうのではなく、息の長いブランドとして育てていきたい、という気持ちもありました。

原田そうですね、我々はお酒の市場では後発なので、「この製品は何をしてくれるのか」ということを、分かりやすく伝えられるポジショニングを探していたんです。立ち上げのときは、ネーミングとコンセプトとデザインの案を同時につくっていました。そこで最初は、よくある缶チューハイのデザインというのも検証してみたんです。

──缶チューハイのパッケージデザインといえば、果物のリアルなイラストや写真に、水しぶき、キラキラした鮮やかな色、というイメージです。

原田まさに、そういうデザインをやってみたんです。その結果、私たちがつくるべき製品はこういうものではない、と分かりました。そこで、いったんコンセプトを「こだわりのレモンサワーを出すお店」と定義してみたんです。

サブストロームそこから、「レモンサワーにこだわるお店の屋号は何がいいだろう?」と考え、ネーミングの案を出していきました。「初代手絞り屋」などいくつも考えた中から、「檸檬堂」という名前が出てきたのです。

後発だからこそ「レモンサワーの歴史と文脈」を大事に

──「檸檬堂」は他の缶チューハイのパッケージとは一線を画していますね。全体のイメージは「前掛け」なのでしょうか。

原田そうなんです! 分かっていただけましたか。「檸檬堂」のブランドのキャラクターを考えたときに、まだ若いけれど自分なりに工夫をしておいしいレモンサワーをつくっている、職人のような大将という人物像を設定し、その大将がお客さんを出迎えるときにしている藍染の前掛け、というイメージでデザインしました。グラスやお品書きなど、居酒屋に関連するモチーフをいろいろ試してみたのですが、一番しっくりきたのが前掛けだったんですよね。

それに加え、レモンのアイコンを大きく配置することで、レモンにこだわったお酒であることを表現しました。レモンのまわりにはスクイーザー(搾り器)や枝葉、文字、図形を配置し、「紋」にしています。書体は手づくり感のあるものを選びました。懐かしいけれど新しい、レトロモダンな雰囲気に見えるよう意識しています。人の気配を感じるようなデザインにしたかったんです。

──味ごとに、パッケージデザインも少しずつ違うんですね。

原田同じブランドであることがひと目でわかるように、レモンのアイコンは同じ位置に同じ大きさで配置しています。紋のディテールで、それぞれの味の特徴を表しているんです。「塩レモン」は波の絵柄を入れ、そこから塩を想起させるようにしています。「はちみつレモン」は、よく見ると蜂が描かれているんです。

──プロジェクトが開始してから発売に至るまで、どれくらいの時間がかかったのですか。

サブストローム1年くらいですね。そもそも清涼飲料とアルコール飲料では、商習慣や広告表現も違います。すべてを確認しながらまったく新しくつくり上げていくプロジェクトだと考えると、1年でここまできたのは驚異的なスピードだと言えるでしょう。

でも期間が短いからといって、内容が薄いわけではありません。レモンサワー自体が、1960年代に生まれた歴史ある飲み物で、今も実際に飲まれているカルチャーがある。その背景があるからこそ、味もネーミングもパッケージも、その文脈を汲んだ奥行きのあるものになりました。

実は今回のプロジェクトチームには、お酒が好きな人が集まっています。それゆえに、「自分たちが飲みたい製品をつくろう」とモチベーションが高く、思い入れも強かったんです。

原田私も、お酒が好きだからメンバーとして呼ばれたんだと思っています(笑)。どんなデザインだったら手に取りやすいか、何がフックになるのか、というお酒好きの気持ちを分かった上でデザインできたのはよかったですね。

サブストロームチームメンバーに恵まれたプロジェクトで、全員が強い情熱を持って妥協せずやりきった。その結果、お客様に本当においしい製品をお届けできることを嬉しく思います。

──今回は九州限定での発売です。今後、全国展開をする予定はありますか?

サブストローム今のところ、具体的な計画はないんです。他地域にお住まいで「檸檬堂」を飲んでみたいという方はぜひ、九州への旅行や出張の際にお試しください。

写真左から
●原田朋子(はらだ・ともこ) / 2004年に日本コカ・コーラ株式会社入社。「ジョージア」「爽健美茶」「い・ろ・は・す」などの担当を経て、最近では「綾鷹」「ファンタ」「ザ・タンサン」のパッケージデザインを主に手掛けた。
●パトリック・サブストローム / 日本コカ・コーラ株式会社入社後はCMOのアシスタント職を経てブランドチームに。フレーバー炭酸チーム、「コカ・コーラ」ブランドチームを経て、現職。新ブランドや新ビジネスの開発を担当する。
●横山明幸(よこやま・あきゆき) / 飲料メーカーを経て、2016年に株式会社コカ・コーラ東京研究開発センター入社。コーヒーグループで、「ジョージア」の製品開発を担当している。

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